褒めて育てる

褒めて育てる落とし穴とは

子供は褒めて育てるべきだという意見があります。

一般的に、褒めて育てることで、子供の学力があがったり、生活態度が良くなったりする。これは子供の自尊心の育つからと考えられています。

けれども、子どもを褒めて育てれば、子供の自尊心が高まり、自信を持って、いろいろチャレンジできる良い子に育つというのは、本当なのでしょうか。

たしかに、心理学の分野では、自尊心が高い生徒は教職員との関係が良好であり、人間関係の構築もうまく、学習意欲も高い傾向があるといわれます。一方で、自尊心の低い子供は人間関係が上手に築けず、勉強に対するやる気も低く、自分の実力を過小評価してしまうと言われてきました。

ところが、フロリダ大学のバウマイスター教授ら(心理学者)の研究により、子供の自尊心が高まると学力がアップするという説は覆されました。

自尊心と学力は相関関係にすぎない

自尊心 学力

フロリダ大学のバウマイスター教授ら(心理学者)の研究により、子供の自尊心が高まると学力がアップするという説は覆され、自尊心が高いから学力がアップするのではなく、学力が高いから自尊心が高いのである。

という結論がでたのです。

別の調査でも、学力の高い子供の自尊心が結果として高くなっているだけ、という結論が出ています。

さらに、バージニア連邦大学のフォーサイズ教授の実験が興味深いです。

フォーサイズ教授は、最初の試験で成績が悪かった生徒集めて、その生徒たちをランダムに2つのグループに分けました。

1つのグループには、毎週メールで宿題に関する連絡とともに、自尊心を高めるメッセージを送りました。 自尊心を高めるメッセージとは、たとえば「あなたはやればできる人である 。」「あなたはもとの頭が良い。」などという、前向きで自尊心がくすぐられるようなメッセージです。

もうひとつのグループには、宿題に関する事務的な連絡や本人の管理能力や責任感をもつようにというメッセージを送りました。

この二つのグループですが、どちらのグループが次に行ったテストの成績が良かったと思いますか。

褒めて自尊心を育てれば、やる気がでて成績がアップするのであれば、当然はじめのグループの方が良い成績のはずです。

けれども、実際は違いました。

褒めて、自尊心を高めるメッセージを送ったグループの成績のほうが、統計的に有意に低かったのです。

子供をほめて自尊心を高めることは、必ずしも成績アップにつながらないのです。とにかくどんなことでも褒めればいいと、こどもをほめると、根拠のない自信や実力を伴わない自信をつけた子になりかねません。

こどもは褒めて育ててはいけないのか

褒める 自尊心

では、子供の褒め育てはいけないのか。褒めて育てるのは逆効果なのか。

そんなことはありません。ポイントは褒め方にあるのです。

では質問です。あなたは子供を褒めるとき、どちらの言葉を使いますか。

1   「あなたは頭がいいわね。」

2    「よく頑張ったね。すごく努力したのね。」

さて、どちらを選びましたか。

コロンビア大学のミューラー教授らによると、こどもたちをランダムに2つのグループに分け、同じテスト(1回目)を行ったあと、ひとつのグループには「あなたは頭が良い」と、こどもたちが持つ、もともとの能力をほめました。

もう一つのグループは、「よく頑張ったね」と子供の努力をほめました。

その後、同じ子供たちに対して難しいテスト(2回目)をしました。

さらにその後、同じ子供たちに一回目のテストと同レベルのテスト(3回目)を行いました。

結果、努力をほめた子供たちの成績はアップし、能力をほめたこどもたちの成績はダウンしました。

こどもの能力を褒めてはいけない

こども 能力

これはなぜでしょうか。

能力をほめられた子供たちは、このテストは何かを学ぶのが目的ではなく、良い成績をとるのが目的であると考えたからです。また、良い成績がとれたときは、自分の頭が良いからたと考え、とれなかったときは、自分の頭が悪いからだと、自分の持って生まれた能力のせいにする傾向がありました。

つまり自分の能力面にしか目がいかず、努力する、頑張るということをおろそかにしてしまったのです。

一方、努力をほめられた子供たちは、2回目、3回目のテストでも、あきらめず努力して問題を解こうとしました。努力をほめられたこどもたちは、悪い成績をとったとき、自分の努力が足りなかったのだと考える傾向がありました。

つまり、こどもをほめるときに「こどもの能力」をほめると、子供のやる気がダウンするのです。

思い当ることはありませんか。

こどもを褒めるとき「あなたは頭がいいのね。」「あなたはやればできる」はおすすめできません。

子ともの能力ではなく、行動を褒めてあげましよう。

たとえば「今日はお母さんに起こされなくても、朝、1人で起きられたね。偉いね。」「今日は2時間も勉強したんだね。宿題も全部終わったね。頑張ったね。」

というようにです。

こどもの能力を褒めるのではなく、こどもの行動を具体的に褒めることによって、こどものやる気が引き出せます。

わたしは親に褒められたことがないから、褒めるということがわからない。人を褒めることが苦手なんです。褒めようとしても言葉にならないんですと言うときは、能力面でも、行動面でも、とにかく褒めてみるのもよいでしょう。

まず、親が子供を褒めることに慣れないと、前にすすめないからです。そして、慣れてきたら、子供の能力ではなく、子供が頑張った内容を(行動)を褒めるようにしましょう。

そうすることで、「褒め育て」を成功させることができるのです。